○性という思想

○性という思想

人間にとって性とは何か? という問いは古くていまだにはっきりとしない問題である。それは何故かと言えば、人間と動植物とは、子孫繁栄のために設えられた性の快楽が同じ質量で、脳髄に組み込まれているからに他ならない。したがって、性的行動には快楽が伴う。人間以外の生き物は、繁殖期という枠組の中で性の営みをなしているから、人間以外の生物に性の悦楽が伴うにせよ、それははっきりとした、子孫を残す、という目的を果たすための装置としての悦楽である。装置としての悦楽は、繁殖が己れの命を懸けたものであれ、装置であるが故に、必ずなし遂げられる。だからこそ、この場合における性はあくまで繁殖のための装置としての役割と諒解すべきものである。

人間にとっても性の悦楽はあるが、しかし必ずしもそれは子孫繁栄のための装置として存在するものではない。したがって人間に繁殖期などは存在しない。だからこそ、性は人を時として惑わせ、狂わせることすらある。あるいは、性を金銭取得のために売買することも出来る。この次元においては、繁殖期ではないにせよ、人間以外の生物の性の営みと同じ次元の性表現でしかない。いや、金銭的欲望が支配する思想であるから、純粋な繁殖のための性表現より格段に落ちる代物だろう。人間には知恵や経験則による知識の蓄積が出来る能力があるからこそ、動植物並の性の悦楽に身を任せたときの空虚感は甚だ大きいと思われる。もしも、この次元の性的表現で満足している人間がいたとしたら、その人は人間という分類から外れている輩である。買春や、痴漢行為や、性的暴行などを引き起こす人間はもはや人間とは言えない、人間以外の生き物として考えるべきである。このような行為に走る人の社会的地位や、金銭の有る無しは、犯してしまった行為を計る目安にはならない。太宰 治の名を汚すようで悪いが、敢えて、こういう人々を「人間失格」と名付けておく。この種の人々に欠落している、人間にとって最も大切な要素、それが愛という概念性である。愛の介在しない性的悦楽は、性的快楽を貪るという意味合いにおいて、醜悪そのものである。男女の性器の結合という事実だけが支配する考えや行為に陥ってしまった人々にとっては、その時点から人生の終焉を意味している、と言って過言ではないだろう、と僕は思う。

このように書くからと言って、僕は、「~の品格」的なエセ啓蒙思想を吹聴しているのではない。僕はむしろ、愛とは人間が時代によって利便的に創り出した社会制度など、一気に凌駕する可能性を秘めた存在である、という思想を支持する人間である。愛は全ての存在を凌駕するゆえに、力強く、生きるエネルギーに満ちあふれているのである。社会通念など、愛の前には何の意味もなさない。さらに言えば、社会通念を常に逸脱し得る内的力を愛と呼ぶのである。愛こそが果てしない退屈な日常性に潤いを与え、人に生きる悦びを知らしめ、生の充溢感を悟らせる不可欠な要素なのである。だからこそ愛は性的交歓だけを意味しない。勿論愛の充溢した交歓はすばらしいが、愛とは、愛を感じた他者を無条件で受け入れる力に満ちあふれてもいるのである。だからこそ愛の欠落した性的悦楽は醜悪なだけであって、唾棄すべき行為だ、と僕は思うのである。愛のない性的悦楽とは、男にとっては射精の快楽だけの問題であり、女性にとっては、クリトリスの刺激がもたらす快感だけの問題だ、と言ってもよいのではないか? 愛の欠落した性的営みは男性器と女性器の結合、あるいは、男性同士の性的結合、及び女性同士の性的快楽の果てしない追求に貶められる。

そろそろ締めくくろう。結論はこうだ。愛は純粋である。従って愛ある交歓は純粋である。愛は社会通念など凌駕する存在である。反対に愛の介在しない性的営みは醜悪である。性を金銭取得のための道具にするような商法は全て禁ずるべきである。性器が見えたの、見えないだのという類の警察権力の浪費は税金の無駄使い以外のなにものでもない。性愛に必要悪という概念を持ち込むべきではない。必要悪という概念を認めた途端に、人間は堕落するのである。今日の観想である。

○推薦図書「ある戦いの記録」 後藤明生著。集英社文庫。宙づり状態にある男の、正体不明の不安な日常生活からの脱出を描いた作品です。何の変哲もない日常生活を、苦いユーモアと軽妙な筆致で、現代という時代への問いかけをしている作品です。お勧めの書です。どうぞ。

京都カウンセリングルームhttp://www.counselor-nagano.jp/
アラカルト京都カウンセリングルームhttp://www.sodan119.jp/     長野安晃

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック